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Story

はじまりの記憶

季節は、ただ見るものではありませんでした。
風の匂い、肌に触れる空気、手を動かす時間。
離れてみて初めて、
それが自分の感性を育ててくれていたことに気づきました。

季節とともにあった暮らし

季節は、ただ見るものではありませんでした。

春の、眠くなりそうな陽気。
夏の夕方に響く、ひぐらしの声。
秋の澄んだ空気と、金木犀の香り。
冬の静けさと、ストーブの匂い。

そして、手仕事の中にも季節がありました。

春には山菜を摘み、
夏には梅シロップやジャムを仕込み、
秋には柿を干し、
冬には餅をつく。

季節は、遠くにある風景ではなく、
いつも暮らしの中にありました。

手で触れ、匂いを感じ、音を聞きながら、
知らないうちに、日々の感性が育っていたのだと思います。

離れてみて、気づいたこと

今、私はカナダで暮らしています。

カナダには、広大で美しい自然があります。
森も、湖も、空も、とても大きく、力強い。

けれど、日本を離れてみて気づいたのは、
自分が育った場所にあった、もっと細やかな季節の美しさでした。

朝の空気が少し変わること。
風の匂いで季節を感じること。
台所に並ぶ旬のもの。
庭先や軒下に残る、暮らしの気配。

大きな自然ではなく、
毎日の中にそっと入り込んでいる季節。

それは、日本で、
そして自分が育ったこの土地でこそ味わえる美しさなのだと、
外から見て初めて気づきました。

音がひらく時間

カナダで、日本人ピアニストの演奏を聴く機会がありました。

その音はとても自由で、

一音一音が光っているように感じました。

そのとき、ふと思いました。

自然の中で、誰にも気をつかわず、

窓を開けて、森に向かってピアノを弾けたら、

どれほど気持ちいいだろう。

防音室に音を閉じ込めるのではなく、

風や鳥の声、木々のざわめきと一緒に、

音が自然へひらいていく。

そんな時間が、新しい音楽や、

自由な発想を生むきっかけになるかもしれない。

Maniwa Senseにおけるピアノは、

ただ演奏するためのものではなく、

感性をひらくための静かな入口です。

これから

2026年6月に帰国します。

カナダで見つけたこの想いを、
今度は自分が育った場所で、
少しずつ形にしていきたいと考えています。

Maniwa Senseは、まだ完成した宿ではありません。

古民家を整え、
季節を記録し、
手仕事を重ねながら、
この場所を少しずつ育てていきます。

いつかここで、
訪れた人の心が少しほどけたり、
忘れていた感覚が戻ってきたり、
新しい音や表現が自然に生まれていくことを願っています。

季節にふれる。
感性がひらく。

Maniwa Senseは、
そんな小さな瞬間を、もう一度暮らしの中に取り戻すための場所です。

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